山深い長いトンネルと、それが途切れるわずかな透き間から見える碧い天竜川。
水窪駅から飯田行きの下り普通列車で二駅、予想どおり駅ホームに降り立つ人も、また列車の到着を待つ人の姿もありません。
すでにご承知の方も多いことと思います。昨今の秘境駅ブームの火付け役ともなった小和田駅です。その道のマニアの間では全国的にあまりにも有名で、連休や夏休みなどにはカメラと時刻表を手にした鉄道ファンで賑わうそうです。
列車がホームを離れてトンネルの闇の中に消えると、残ったものは静寂の二文字です。ホームからすぐ眼下に天竜川の広い流れを望み、梢が風に揺れる音と鳥のさえずりしか耳に入りません。