木材店が造る木の家 益子材木店

アカマツ構造用集成土台

date 2010.10.07

お祝いの意味を表す「松竹梅」という言葉があるように、マツは日本人にとって誰でも知るなじみの深い木です。私たちがひとくちに「マツ」と呼ぶ樹材には、アカマツ、クロマツ、エゾマツ、トドマツ、カラマツ、ヒメコマツ、輸入材ではベイマツ、ロシアアカマツなど、建築用材としての他にも多種に上ります。住宅建築では土台にマツを使うという事例はあまりなく、土台として適するマツは唯一「カラマツ」だけとされてきました。

それは、多くのマツは伐採したては柔らかく、伐採時期によって腐朽菌に冒されやすいという特性を持つことが大きな理由です。先人たちからマツという樹は、家屋全体の荷重を支える耐久性と、さらには湿気がこもりやすい床下の環境下で耐湿性に欠けると判断され伝えられてきました。なおかつ、梅雨と夏期という独特の気候を過ごす我が国では、木材を取り扱う上で湿度に対する人的配慮は必要不可欠です。

アカマツ構造用集成土台

それらが我々木材業者を源として、大工さんをはじめとした職人さんたちによって受け継がれ、木造軸組住宅は我が国独自の文化として今日に至りました。幸いにも国内には、ヒノキやヒバなど土台に適する樹がマツ以外に存在します。
このように、数ある適材適所の項目の中で「マツは土台として不向きである」という考えは、木材業に携わる者の中では明文化されていない常識として存在しています。

そして今日、気密性と断熱性能が優先視される現代住宅では、土台をはじめとする主要な木材構造部が外壁と内壁により塞がれてしまい、外気と接すること(通気)ができなくなりました。その結果我々木材業者は、今まで以上に主要木部の耐久性と耐湿性に配慮する必要に迫られました。このような理由から、心ある建築業者や木材商には、現代住宅の土台にマツを使うという概念は持ち合わせてはいないはずです。

ところがそのマツを、集成材として加工するとこうして公然と土台に使われます。その理由を尋ねると「防腐剤処理してあるから」とか「集成加工してあるから」といった答えが返りますが、少なくとも一介の材木屋風情の私には、質問の答えとしてまったく理解できません。

ではマツという樹が持つ特性は、ここでいったいどのように考え判断されるのでしょう。マツだけではありません、前項でお伝えしたLVLも同様で、集成材化して薬剤処理すると素材である木材の特性がすべて無視されることになります。まるで赤い皮のリンゴを剥いて黄色く色を付け、「食べてみて、ミカンだよ」と言っているように思えてなりません。

アカマツ構造用集成土台

現場に掲げてある掲示板に、工期中には様々な検査を受け、竣工後には保証も行うと書かれてあります。この住宅会社の担当者が、建て主さんに対して「マツという樹はですね」と説明したとは到底思えないし、工事を依頼した建て主さんも尋ねて理解していれば、常識的にこの部材を土台に選択することはないでしょう。この写真は不幸にも「伝えなかった」と「聞かなかった」「学ばなかった」が重なった結果です。

多くの住宅会社では「マツは土台として不向きである」という木材の特性を建て主さんに伝えてはくれません。建て主さんの多くも、よほど木材か住宅に関心が深い方でないと聞くことはないでしょう。そして住宅の資材として様々な木材が使われます。
それでも材木屋はなにも言いません。

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