木材店が造る木の家 益子材木店

相模の国の焼き餃子

date 2012.06.29

中学時代の同級生が亡くなった。いや、正確には亡くなっていた。

兄弟が多い彼は、高校を卒業すると同時に地元を離れ、以来神奈川県内で生活していた。同じ町内会の同級生に聞くと、地元に帰省することはほとんどなかったそうだ。
ちょうど一年前、三年ぶりの同窓会開催の案内状を送ると出席にマルがついて返送されてきた。ところが直前になって「不覚にも怪我をして出席できない」と連絡があった。
「皆には心配を掛けたくない、黙っていて欲しい」と釘を刺され、当日私は「彼は急な仕事の都合で欠席」と告げた。

その後、当日の出席者の集合写真を送ると、「顔と名前が一致しない、名前を振って教えて欲しい」と催促があった。改めて席次と名簿を送ると、「皆歳を取った、懐かしい。次回は必ず出席する」と礼状が届いた。「こいつ、ほんとうに来たかったんだ」と、せっかくの機会を悔やんだ。

今年大学四年生22才の長女、高校三年生18才の長男、中学三年生15才の次男がいる。18才の長男は中学時代の彼に驚くほどそっくりだった。六畳の和室に飾られた遺影に手を合わせて線香を手向けた。細君が「ご遠方から…、せっかくですのでお昼でも」と気遣ってくれた。が、さすがの私もこの状況下で厚かましくご厚意に甘える気にはなれなかった。

ビールと焼き餃子

正午を回った。玄関で細君に見送られ、駅に向かって歩くと赤いのれんが目に入った。店内に客は私の他にもう一人、カウンター越しに見える女将に、ビールと餃子を頼んだ。

あの時、一年前に会っていれば…と、焼き上がったばかりの熱い餃子を冷えたビールで流し込む。家族が最も必要としている時に逝ってしまった。
そして彼に次回は無くなった。もう皆にうそを告げなくてもいい。

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