木材店が造る木の家 益子材木店

内蔵と暮らす人たち

date 2013.12.12

観光物産センター「蔵の駅」で案内図を頂きます。
この「蔵の駅」自体も内蔵がある施設です。ここに若い女性職員(?)さんが三名。「多くの公開家屋はすべて所有者さんの居住空間で、家屋によって公開できる範囲は限られております。見学料金はそれぞれの家屋で支払ってください」。

それぞれの店舗の入り口に小さく「公開中」と看板が見えます。
「内蔵を拝見したいのですが」と告げると、初老のご夫婦が「はい、こんにちは、いらっしゃいませ」と出迎えてくれました。今回訪ねたお宅の見学料金はどちらも200円。玄関先に置かれた小皿に100円玉二枚を置きます。

早速ご当家のご主人が案内をしてくれました。
その家の歴史、蔵を建てた年代、そして現在の使用状況など。さてここで、現在使用している一個人の居住空間を、有料(200円ですが…)とは言え初めて訪ねる他人に家人自ら紹介するとは、かなりの自信と勇気が必要だとまず感心しました。

「昔は賑わいましたが、今はこんな田舎街ですからね。これからの冬は雪に埋もれてしまいます。ここに今あるものを自分たちでお客さんに紹介する、お金の掛からない小さな町おこしですよ」。

内蔵二階の梁と柱

内蔵の説明には自然と力が入ります。使われている木材の種類や大きさ、梁背の高さ。土扉の大きさと重さ。左官壁の機能性と美しさ、などなど。

「揃えたクリの木を乾かすのに10年、その後の建築に5年を費やしたと聞いています」。
「雪が屋根に積もると、このケヤキの梁が下がって板戸の動きが重くなります」。
「軒桁に棟梁の名が刻まれていましてね、その人は左官屋さんだそうです」。
「あの壁、一昨年の震災で漆喰に亀裂が入りました。上塗りをしましたが残念です」。
「この蔵の奥座敷で長女の結婚式をしました。いや、蔵から嫁に出したわけで」。
「土扉は片方で900kgあるそうです。今でも男扉と女扉はピッタリと閉まります」。
「この黒漆喰を直そうとしましたら、5年待ってくれと言われまして」。

どなたも説明がお上手です。そう、長く使える家屋の建築には、多くの人力と時間が掛かります。住宅のほとんどが不動産ではなく消費財と変わった現在の建築。ご主人から改めて家造りの本質を教えていただきました。

しかし老婆心ながら…。
今後内蔵の維持管理には、どうしても職人不足と資材調達が課題です。あくまでも個人所有の家屋とは言え、これを一個人の采配で解決するのはかなりの労力が必要でしょう。

北国の小さな町の歴史ある町並み。残りあと半分、近いうちにもう一度足を運びたいところです。

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