正午を過ぎたばかりの金野駅は、キリッと青く澄んだ冬空が高く広がっていました。
他にホームに降り立つ人もなく、駐輪用の屋根がある広い駅前広場にも、車や通学用の自転車すら見ることはできません。それでも車が通ったわだちが残り、ほんのわずかではありますが日頃この駅まで人の往来があることがうかがえます。
予想に反して、かなり山深いという印象は受けません。それもそのはず、ここから二つ先には天竜峡駅、多くの人が生活する平野に近づいています。
陽が高くなって、北風が冷たく吹いてきました。その風除けができる小さな待合室で、宿の若女将に用意してもらったお弁当と暖かいお茶でこの日のお昼です。
待合室から遠く望める白い雪をかぶった山々は、方角からして木曽の駒ヶ岳と思えます。
この金野駅の滞在時間は約一時間、帰路に使う上り豊橋行き普通列車の時刻が迫ってきました。残念ながら今回の行程はここまでです。金野から豊橋まではちょうど三時間、車窓に青い空と天竜川を眺めながら、敵多い日常の生活に戻ることにしましょう。