木材店が造る木の家 益子材木店

溶けた土台

date 2012.02.01

現在木造住宅の浴室は、ユニットバスと呼ばれる工法が考案されて以来、新築住宅はもちろん浴室改装工事でも、もはやそれが当然のように広く普及し採用されています。
住宅設備機器各社は競って機能やデザインを開発し、建て主さんにとって保温性能をはじめ使い勝手などその性能は、この数年格段に向上しました。

三年ほど前、建築後35年を経過した在来軸組住宅の浴室改装工事に携わりました。ご家族はご夫婦の他お子さんが三姉妹の五人家族、その三姉妹は皆さん独立されて現在当家にはご夫婦だけでお住まいです。ご主人によると当時の住宅金融公庫仕様の注文住宅で、地元の建築業者から「公庫仕様だから安心」との言葉を信じて購入したと言われます。

下の図が浴室内のおおまかな配置です。
35年前の工法ですから、ステンレス製の単体浴槽に浴室の床と壁はタイル貼り施工。浴室内を初めて拝見したときには、タイル目地に多少のヒビが入っていました。

浴室の配置

まず既存の浴室解体工事、下の写真は浴室ドアを撤去した直後の撮影です。ちょうどドア直下のコンクリート基礎の上、たしかここには土台があったはずです。給湯栓がある箇所には土台があります。作業中に人の手によって取り除かれたわけではありません。このとき現場で作業をしていたのは私ほか三名、皆が「土台がない…」と目を凝らしました。

浴室ドア撤去直後

おそらく…ですよ、35年間365日、家人が毎日のようにシャワーと浴槽を使い、まして若い女性が三人も暮らしていたことを考えると、ドア下のタイル目地の繋ぎ目から真綿に水のように土台に水が差していったのではないかと。
ここに使われていた土台は、当時もっとも多く流通していた通称「ベイツガ注入土台」。輸入材であるベイツガに防腐防蟻薬剤をしみ込ませたものです。

しかし幸いにも「柱2」は土台から欠落しないで残っており、そこは木造軸組工法が持つ「他の部材を助け合う」構造によるところでしょう。

土台をヒノキに交換

すぐさまご主人に立ち会っていただき、この部分の土台を交換することになりました。上の写真は土台交換後に撮影。今回は細君のご希望でヒノキのアカミを使いました。
この後にユニットバスの施工が行われました。その構造上上水漏れの心配は少ないものの、ご主人の「見えないところとは言え怖いものだね…」との言葉が印象に残りました。

住宅金融公庫仕様という三つ葉葵の印籠も、決して神の手によるものではありません。声なき木材業者としての優先順位は、まず第一に適材適所です。

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